この高原の広場に来たのは25年ぶりだった。
以前、最後にここに来た時、私はまだ20代だった。
あの時は、変わらぬ同じ日々がこれからも延々と続いていくと単純に信じていた。
でも、あれで終わったのだ。
◇
この日、ふと思い出して、久しぶりにここを訪れた。
当時の名残はあるけど、時間の経過とともに、輝きは褪せて、やさしく朽ちていて、少し荒れていた。
ほのかによみがえる記憶。
熱気。匂い。人々の声。ぬくもり。笑顔。音。リズム。
歩きながら、かすかに残る記憶を楽しみ、思い出をまた元の場所にそっと下ろして置いていく。
広場の中を散策していると、ポツリポツリと雨がこぼれ始めた。
やがて急に雨がざーと降り出す。
慌てて車を停めていた場所に走って戻る。
朽ちかけていた橋をわたり、道路に辿り着き、急いで車の中に滑り込んだ。
車を叩く雨音を聴きながら、昔の自分を思い出す。
当時よりも、ずいぶん年を取ってしまったけど、心はあの頃とほとんど変わらない。
いや、あの頃よりは自由で明るくなったかもしれない。
さよなら、昔の私。
ここにいた私は、記憶の中でキラキラと輝き、若くて生き生きしていて、未来を信じて明るい表情で元気に笑っていた。
だから、ここにそのまま置いていく。